「愛人に全財産?」公序良俗違反は成立するのか

Three family members sitting anxiously facing a standing professional woman with legal documents on a table

「夫が、内縁の女性に全財産を遺贈するという遺言を残していました。こんな遺言は無効ではないのでしょうか?」

実際の相続相談で、決して珍しくないご相談です。

配偶者や子どもがいるにもかかわらず、いわゆる“愛人”や内縁関係の相手に全財産を遺贈する内容の遺言。
感情的には到底受け入れられないものかもしれません。

では、このような遺言は**「公序良俗違反」として無効になるのでしょうか?**

今回は、裁判例の考え方を踏まえながら解説します。


■ 遺言は原則として自由

日本の法律では、「遺言自由の原則」が認められています。

つまり、

✅ 誰に
✅ どの財産を
✅ どの割合で

残すかは、原則として遺言者の自由です。

たとえ家族以外の人であっても、法律上は遺贈することが可能です。


■ 公序良俗違反とは?

民法90条では、

「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とする」

と定められています。

これを「公序良俗違反」といいます。

では、不倫関係にある相手への遺贈は、公序良俗違反にあたるのでしょうか。


■ 裁判所の判断は?

過去の裁判例では、

✅ 単に不倫関係にあるというだけでは無効にならない
✅ 長年の内縁関係にあった場合は有効とされることが多い

と判断されています。

つまり、「愛人だから当然に無効」というわけではありません。

ただし、

✅ 不倫関係を維持・強化する目的での贈与
✅ 家族の生活を著しく脅かすような極端な内容
✅ 社会的に著しく妥当性を欠く事情

などがある場合には、公序良俗違反が問題となる可能性があります。

しかし、実務上は公序良俗違反が認められるハードルは非常に高いといえます。


■ 本当に問題になるのは「遺留分」

多くのケースで、実際に争点となるのは「公序良俗」ではなく、遺留分です。

配偶者や子どもなどの法定相続人には、最低限保障された取り分(遺留分)があります。

仮に「全財産を愛人に遺贈する」と書かれていても、

✅ 配偶者
✅ 子ども

は、遺留分侵害額請求をすることができます。

つまり、

遺言そのものは有効
→ しかし遺留分請求によって金銭の支払いが発生

という形になることが多いのです。


■ 感情的対立が深刻化しやすいケース

このタイプの相続は、

・配偶者の精神的ショック
・子どもの怒り
・相手方との直接対立

など、法的問題以上に感情的対立が深刻化しやすい傾向があります。

結果として、

✅ 長期の交渉
✅ 調停・訴訟
✅ 近隣や親族を巻き込む紛争

へ発展することも少なくありません。


■ 遺言者側ができる対策とは?

もし内縁関係の相手に財産を残したいのであれば、

✅ 遺留分を考慮した設計
✅ 家族への一定の配慮
✅ 付言事項で理由を丁寧に説明する
✅ 公正証書遺言の活用

など、慎重な準備が必要です。

何も対策せずに「全財産を遺贈する」とだけ記載すると、
高い確率で紛争になります。


■ 相続人側ができる対応

もし突然このような遺言が出てきた場合でも、

✅ 遺言の有効性の検討
✅ 遺言能力の有無
✅ 遺留分侵害額請求

など、法的に取れる手段があります。

感情的に行動する前に、まずは冷静な法的整理が重要です。


■ 松浦正樹行政書士法務事務所のサポート

当事務所では、

【遺言を作成する側】
・内縁関係への遺贈設計
・遺留分対策
・公正証書遺言作成支援
・紛争予防型の文案作成

【相続人の側】
・遺言内容の法的整理
・遺留分に関するご相談
・今後の対応方針のアドバイス

を行っております。

単に「有効か無効か」だけでなく、
将来揉めない設計をすることが最も重要です。


■ まとめ

「愛人に全財産」という遺言でも、直ちに公序良俗違反で無効になるとは限りません。

しかし、

✅ 遺留分の問題
✅ 家族間の深刻な対立
✅ 長期紛争のリスク

は極めて高いといえます。

遺言は自由ですが、その自由には責任が伴います。

大切なのは、
残したい人への想いと、残される家族への配慮のバランスです。


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