「母は認知症と診断されていました。それでも遺言は有効なのでしょうか?」
相続の現場で、非常に多いご相談の一つがこの問題です。
高齢化社会の現在、遺言作成時に何らかの認知機能の低下が見られるケースは珍しくありません。
そして、相続開始後に
「当時、判断能力はなかったはずだ」
「この遺言は無効だ」
と争いになることがあります。
今回は、裁判例を踏まえながら、「遺言能力」とは何か、認知症と遺言の関係について解説します。
■ 遺言に必要な「遺言能力」とは?
民法では、遺言をするには**「遺言能力」**が必要とされています。
これは簡単に言えば、
✅ 自分の財産の内容を理解している
✅ 誰にどの財産を渡すのか理解している
✅ その結果どのような影響があるか判断できる
という能力です。
必ずしも「完全に健康」である必要はありません。
重要なのは、遺言を作成した“その時点”で判断能力があったかどうかです。
■ 認知症=即無効ではない
ここが大きな誤解されやすい点です。
裁判例では、
✅ 認知症の診断があっても有効とされたケース
✅ 軽度の認知症でも無効とされたケース
の両方があります。
つまり、診断名だけで決まるわけではありません。
■ 実際の裁判例の考え方
裁判所は次のような事情を総合的に判断します。
・医師の診断書
・カルテの記載内容
・要介護認定の状況
・遺言内容の複雑さ
・遺言作成当日の様子
・公証人の証言(公正証書遺言の場合)
例えば、
比較的単純な内容で、作成時の受け答えが明確だったケースでは、
中等度の認知症と診断されていても「有効」と判断された例があります。
一方で、
財産関係を正確に理解していなかった、
周囲に強く誘導されていた、
と認定された場合は、無効とされた例もあります。
■ なぜ争いになるのか?
多くの場合、
「特定の相続人に多く残している」
「再婚相手に全財産を残している」
など、内容に偏りがある場合に争いが起こります。
遺言能力は、遺留分請求や感情的対立と結びつき、
遺言無効確認訴訟へ発展することもあります。
裁判になれば、
・長期間の争い
・高額な弁護士費用
・家族関係の決定的な悪化
という結果になりかねません。
■ 公正証書遺言なら安心?
公正証書遺言は、公証人が本人の意思確認を行います。
そのため、自筆証書遺言よりは争われにくい傾向があります。
しかし、
公正証書遺言であっても、遺言能力が否定されれば無効になる可能性はあります。
つまり、形式だけでなく、作成時の状況整備が極めて重要なのです。
■ トラブルを防ぐためにできること
遺言能力が問題になりそうな場合、次のような対策が有効です。
✅ 医師の診断書を取得しておく
✅ 遺言作成時の様子を記録する
✅ 公正証書遺言を選択する
✅ 内容をできるだけ明確かつ合理的にする
✅ 付言事項で理由を丁寧に説明する
事前準備の有無で、紛争リスクは大きく変わります。
■ 「まだ大丈夫」ではなく「今だからこそ」
認知症は進行性の病気です。
判断能力がはっきりしている「今」こそ、
遺言作成に最も適したタイミングです。
「もう少し様子を見よう」
「そのうち考えよう」
と先延ばしにした結果、作成できなくなってしまうケースも少なくありません。
■ 松浦正樹行政書士法務事務所の遺言サポート
当事務所では、
・遺言能力に不安がある場合の事前相談
・公正証書遺言作成サポート
・医師との連携を含めたリスク対策
・将来の紛争予測を踏まえた内容設計
まで総合的にサポートしております。
単に「書く」だけではなく、
争われない遺言を設計することを重視しています。
■ まとめ
認知症だからといって、直ちに遺言が無効になるわけではありません。
しかし、判断能力が不十分であれば無効になる可能性があります。
大切なのは、
✅ 作成時期の見極め
✅ 適切な方法の選択
✅ 専門家による事前対策
です。
ご家族の将来を守るためにも、
少しでも不安がある場合は早めにご相談ください。
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